PROJECT FILE 01
橋脚や高架等の基礎工事に使用されるコンクリート杭は、
地盤に打ち込んで構造物を支える役割をはたしています。
地盤に打ち込んだコンクリート杭と上部の構造物をつないで一体化するために、
従来の工法では多くの時間を要していました。
日コンが新たに開発したコンクリート杭製品とその工法は、
作業工程の大幅な簡略化とコスト削減を実現した画期的な技術です。
1998年入社。同部にて設計事務所向けのパイル営業担当後、土木構造物用のパイル営業として現在に至る(一時期ゼネコン担当の兼任や都市基盤建材営業部在籍あり)。
RSC・RSCP杭の設計折込のスペシャリストとして日々努めている。
2008年入社。技術開発部から本社・名古屋支店・大阪支店の技術サービスグループへ。現在、関西・中国地方のパイルの設計を担当。技術開発部在籍中にスマートカットオフ工法開発に携わる。
既存コンクリート杭の
作業工程の多さ
国土交通省が定めている技術基準にそって設計された杭は、杭の頭の部分を構造的につなぐ「杭頭接合」という方法をとらなければなりません。杭頭接合とは、杭のコンクリートを部分的に壊して、露出させた鉄筋と上部の構造体をつなぐ接合方法です。
杭の上杭は外側に鋼管が付いたSC杭が多く使用されますが、「杭頭接合」のために鉄筋を露出させるには、①外殻鋼管を所定の高さでカットし②コンクリートを粉砕③ガス溶断で鋼管を剥がす④手作業でコンクリートを除去する、という4つの工程があります。この工程のことを「カットオフ」といい、多くの時間を要していました。
新開発のコンクリート杭で
作業性が大幅に向上
日コンでは杭頭のカットオフ作業の簡素化を目的として、新しい構造のコンクリート杭を開発しました。RSC杭はカットオフする部分の鋼管をあらかじめ無くしたコンクリート杭のため、前述の作業工程①と③が不要となります。
もう一つのRSCP杭はRSC杭を発展させたもので、コンクリート杭の製造工程で内部の鉄筋をパイプで覆い、コンクリートと直接触れないようにしてあります。現場での作業はカットオフした頭部分をクレーンで引き抜くだけで完了となります。
これにより、カットオフ工程の施工時間が最短四分の一に短縮され、工費の大幅な削減を実現しました。
これにより、カットオフ工程の施工時間が最短四分の一に短縮され、工費の大幅な削減を実現しました。
技術開発の成果は
特許登録へ
この2種類の杭による工法は、2013 年8 月には、国土交通省の新技術情報提供システムに「スマートカットオフ工法」として登録(登録番号:KT-130048-A)されました。 また、2014年3月には「外殻鋼管コンクリート合成杭の鉄筋を現す方法」として特許登録(特許番号:特許 第5506122 号)されました。 日コンの技術開発の成果が結実し、国土交通省発注の杭工事で初めて採用されて以来、現在までに71件の実績を重ね、多くの現場で採用されています。
平成19年の「杭基礎設計便覧」改定によりSC杭も同様に杭頭(コンクリート部と高価な鋼管部)を取り壊すことになったため、コストダウンと工期短縮を目的として開発がスタートしました。技術開発部の方と協力し、いかにして現場にメリットがあるものを供給できるか試行錯誤の連続でした。
RSC杭開発後、土木コンサルや発注者へのPR活動を行い平成21年より着実に実績を増やしていきました。その後、RSC杭進化版である杭頭引抜タイプのRSCP杭が平成23年の圏央道で採用されたこと及びNETIS登録によりブランドを確固たるものにすることができました。
またRSCP杭については、製品を提供するだけでなく現場に出向き、引抜作業のアドバイスも行いながら普及に努めました。現在は設計時に図面化し、発注時に競合せず着実に受注できるよう、コンサルへのPR活動に重点を置き活動しております。
私が入社した当初、SC杭からの鉄筋のはつり出しは鋼管を剥がす⇒コンクリートを取り壊すという作業を行っていましたが、鋼管が高価であることとはつり出しに時間がかかるために、コストダウンと時間短縮を目的として開発がスタートしました。
全く実績も経験も無い状態からのスタートだったので、製造可能かどうかの判断や製造手順、カットオフの方法まで試行錯誤の連続でした。
またRSCP杭については、どうすればカットオフ部分をスムーズに引き抜けるようにするかが一番の悩みでした。
何度も試作を繰り返して製品として形になったときでも、初めての採用物件では果たして現場でうまくカットオフできるか心配でしたが、大きなトラブルも起こらず無事に終了したときは本当に安心しました。
現在では多くの物件で採用され、また高い評価も頂いており、私にとってこの製品の開発に携われたことは誇りとなっています。