通学路や散歩道にある小さな橋、気にしたことはありますか?
実は日本にある道路橋の約42%が、建設から50年以上経過し、老朽化が進んでいるんです(2024年度末時点)。この割合は急速に増加しており、2018年度末の約27%から、わずか6年で約42%まで上昇しています。※1
老朽化した橋は、床にひび割れができたり、鉄筋が錆びたりして、ある日突然「通行止め」になることも。地域の生活道路が使えなくなると、通勤や物流に大きな影響が出てしまいます。
「じゃあ、全部建て替えればいいんじゃない?」と思うかもしれませんが、全国に約73万橋もある橋を全て建て替えるのは、予算的にも工事期間的にも現実的ではないんです。人手不足も深刻ですし、工事中の通行止めで地域経済にも影響が出てしまいます。
だからこそ、「早く作れて、丈夫で、長持ちする」橋が求められているんです。
そこで登場するのが、「パワースラブ(PC床版)」。日本コンクリート工業グループが開発した、200年使える次世代の床版です。
※1 国土交通省「道路メンテナンス年報(令和6年度)」
橋を人の体に例えるなら、鉄の骨組み(桁)が「骨格」で、その上に乗っかっているコンクリートの床が「筋肉」のようなもの。この床の部分を「床版(しょうばん)」と呼びます。
車が直接走る床版は、重い荷重を毎日何度も受け止めているため、橋の中で最も傷みやすい部分なんです。床版が傷むと、橋全体の寿命が縮んでしまいます。
PC床版の「PC」は「プレストレストコンクリート(Prestressed Concrete)」の略。「あらかじめ(pre)力を入れた(stressed)コンクリート(concrete)」という意味で、コンクリートの内側にギュっと押す力をかけることで、ひび割れに強くした床版のことなんです。
コンクリートには、実は「押される力には強いけど、引っ張られる力には弱い」という弱点があるんです。
床版の上を人や車が通過すると、床版がたわんで引っ張られます。すると、コンクリートにひび割れができます。そのひび割れから雨水や空気が入り込むと、中の鉄筋が錆びて膨らみ(なんと体積が約2.5倍に!)、コンクリートが剥がれ落ちてしまうんです。
だから、橋を長持ちさせるには「ひび割れを防ぐこと」がとても重要なんです。
ひび割れを防ぐために、パワースラブでは「プレストレス」という技術を使っています。
これ、実は炭酸入りのペットボトルと似た仕組みなんです。
炭酸飲料が入ったペットボトルは、内側から圧力がかかって「パンパン」になっていますよね。パワースラブも似たように、内側に常に「ギュッと押す力」が働いています。だから、上を重い車が通っても、ひび割れしにくいんです。
通常のRC床版は、型枠の中に鉄筋を組んでコンクリートを流し込むだけ。鉄筋には特別な力は加えていません。一方、PC床版は違います。
コンクリートを流す前に、特殊な鋼材をグーッと引っ張っておく。
引っ張られた鋼材(緊張鋼材)はコンクリートで固められた後、緊張を解放することで、ゴムが縮もうとするように「元に戻ろうとする力」が働き、コンクリート全体をギュッと押し続けます。
この押す力が、人や車の重みによる引っ張る力を打ち消してくれるため、ひび割れが起きにくいのです。
もし小さなひび割れができても、コンクリートが常に押し続けられているため、ひび割れがピタッと閉じてしまいます。ひび割れから雨水や空気が入らないので、内部の鉄筋が錆びない。これが、パワースラブ(PC床版)が200年使えるという長寿命を実現できる理由です。
従来のRC床版(鉄筋コンクリート床版)に比べて、パワースラブは厚さが約44%薄く、重さも約44%軽いんです。
薄くて軽い床版は、橋を支える柱や基礎への負担も減って補強も最小限で済むため、橋全体のコストダウンにもつながります。
従来のRC床版は、現場で型枠を組んで、鉄筋を組んで、コンクリートを流し込んで、固まるまで1ヶ月ほど待つ……という手間がかかります。
でもパワースラブは工場で作って、現場ではクレーンで設置するだけ。まるでレゴブロックを組み立てるように、数日で完成します。
工事期間が短いということは、通行止めの期間も短くなるので、地域の皆さんの生活への影響を少なくできます。
また、現場での難しい作業が少ないため、建設業界の人手不足の問題にも役立ちます。
パワースラブ(PC床版)は、従来のRC床版に比べて補修サイクルが約2倍に延びます。
適切なメンテナンスを施した場合の推定耐久年数は、RC床版が100年に対して、パワースラブ(PC床版)が200年と、2倍の耐久性があるため、ライフサイクルコストが大幅に削減できます※2
※2 日本橋梁建設協会「技術短信 第10号」(2009年10月、2026年3月改訂)
パワースラブは、全国のさまざまな場所で活躍しています。
【導入事例①:東京都 芝公園歩道橋】
用途:景観に配慮した歩道橋
【導入事例②:熊本県 用水路橋】
用途:農道や用水路を跨ぐ小規模な橋
このように、身近な生活道路や農道、歩道橋など、私たちの暮らしを支える小さな橋で、パワースラブは活躍しているんです。
日本には約73万橋の道路橋があり、その多くが老朽化しています。全てを建て替えることは不可能ですが、パワースラブのような「早くて、丈夫で、長持ちする」技術を使えば、限られた予算の中でも、安全な橋を次の世代に引き継ぐことができます。
目立たないけれど、私たちの生活を毎日支えてくれている橋。その床版を長持ちさせることが、地域の安全と未来への投資につながるんです。
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